私は天使なんかじゃない








最終決戦





  全ての準備は整った。
  躊躇い?
  そんなものは既に投げ捨てた。

  さあ、始めようか。





  通路を抜けた。
  その瞬間、天井が開けた。
  何も知らずに、いきなりここに来たならここを地球だと思うかもしれない。広い広い場所、高い高い天井、球状の物がいくつも置かれている。家だろうか?それだけ大きい。
  大きな球状の物体は二段だったり三段だったりする。
  たぶん家なのだろう。
  ふぅん。
  ここはエイリアンたちの街、というべき場所か。

  ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!

  私はジャンプする。
  背部のジェットパックは火を噴き、私は空を舞う。
  右手にはガウスライフル。
  左手には10oピストル。
  装備がチグハグ?
  それは仕方ないことだ。左手にはPIPBOY3000を嵌めている。その関係でパワーアーマーの左腕部分を装着できない、パワーアシストの恩恵を受けられず普通の腕力。私程度の細腕では
  片手でアサルトライフルは持てないし、これが限度だ。
  空を飛びながら眼下を見る。
  パワーアーマーのヘルメットも着用している、最初は視界が遮られるー……とも思っていたけど、かなり便利だ。ヘルメット内部で視界はモニター化され、ズームイン&アウトは思いのまま。
  解析度も申し分ない。
  使えますね。
  死体が無数に転がっていた。
  全てエイリアンのものだ。
  中に善良な奴もいたんだろうし、見分けが付かないとはいえ女性型もいるんだろうけど……同情は出来ない。
  先に仕掛けてきたのは向こうだからだ。
  平和的に返すつもりはないだろう。
  やめるつもりもだ。
  ならば。
  ならば戦うしかない。
  戦うしかないのだ。
  見えたっ!
  仲間たちがいた。
  エイリアンたちに阻まれている。大通りだ。それぞれ家に隠れたりしながら応戦している。
  敵の数、200はいる。
  ……。
  ……うん、勝てるとは言ったよ、勝てるとは。だけどここまで進軍することはないだろー……。
  わ、私の所為か?
  うー。

  ジャキン。

  飛びながらガウスライフルを構える。
  レールガンと呼ばれる代物だ。
  戦前最後にして最強の装備だとジェイソンさんは言っていた。これ以上の物は作られなかったと。電磁石で弾丸を亜音速の速さて打ち出す。引き金を引いた瞬間、相手は消し飛ぶってわけだ。
  デタラメダな。
  だが、しかし、それ故に最強なのだ。
  食らえっ!

  『ニャーっ!』

  エイリアンたちの群れに叩き込む。
  亜音速で打ち出すんだ、弾丸の威力だけの強さではない。衝撃波が生じ、その場にいた連中が粉々となる。
  すげーっ!
  さすがにこの威力はビビるのかエイリアンたちの軍勢は一時後退を始める。
  仲間たちは家から身を出して私を見た。
  銃を構えている。
  あー、ヘルメットしているから私だと分からないのか。少し上空を旋回し、弾丸を再装填……ガウスライフルの最大の欠点は装弾数1発ということだ……装填後、後退し始めるエイリアンの
  軍勢に無慈悲な一撃を叩き込んだ。これでまた少しは減った。私は地上に降り立つ。
  「待って待って、私よ」
  「ミスティ?」
  「そう」
  エンジェルの言葉に私は頷く。
  仲間は減っていない。
  トシロー・カゴもいる。
  だけど……。
  「フィーさんは?」
  「師匠でござるか? 何のことでござる?」
  合流していないのか。
  ここに来るまでに先ほどの道は通った、血痕はあったけどフィーさんはいなかった。合流したものだとばかり。
  牢獄に転送された?
  それはー……なさそうだなー……。
  「凄いっ!」
  「サリー?」
  「それまるでキャプテン・コスモスのジェットパックみたいっ!」
  「キャプテン・コスモス?」 あー、アニメだっけ?
  「漫画が原作のアニメだよ」
  補足したのはターコリエン。
  そうだ。
  「ターコリエン、大尉はいる?」
  「大尉?」
  「パターソン大尉」
  「アンカレッジの英雄がいるのかっ! ど、どこにっ!」
  「どこかは知らないけど私たちより前から戦ってるって聞いたけど……」
  「大尉がいるなら勝ったっ!」
  おお。
  興奮してますな。
  そんなにも凄いのか、あいにくここにはいないですけど。
  エイリアンたちが戻ってくる。
  連中もこれ以上は退けないのだろう。この宇宙船の規模は知らないけど、それでもこの街は連中にとっても死守すべき場所であり、たぶん最大の防衛ライン。これほどの規模の場所はもうないだろ。
  ここを制圧したら勝ったようなものだ。
  エンジンコアの際にはここまでは想定していなかった、まあ、予知能力はないので当たり前だけどさ。

  ジャキン。

  ガウスライフルを装填。
  勝てる。
  勝てるぞっ!
  この威力、はっきり言ってチート級。
  エイリアンたちは交戦銃を乱射してくる、仲間たちは家の中に飛び退いた。
  私には効かない。
  露出している左腕は当たったらやばいだろうけど、パワーアーマーはびくともしない。ジョンソンさんが聞かせてくれた、パターソン大尉の録音の通りだ。充分に武装した部隊なら勝てる相手だ。
  「こんのぉーっ!」
  発射。
  ミンチがはじけ飛ぶ。
  「保安官、そいつはすげぇな」
  「まさか、ガウスライフル? ミ、ミスティ、BOSは言い値で買うわよっ! 幾らっ!」
  「凄いでしょ」
  再びエイリアン軍後退。
  大体1発撃つだけで10数体は消し飛ぶ。
  これで少しは目が覚めたろ。
  人間を舐めるなーっ!

  「ミスティっ! ……ふぅ。あたしは走りなんだから、少しは手加減して欲しいね。追いつくのに時間が掛かったわ」

  「イカした姉ちゃんだ」
  「そりゃどうも」
  Mr.クラブに冷たく返して赤い髪をかき上げる。
  マリアさんだ。
  不死身の女ソルジャーと呼ばれる、西海岸の傭兵。
  「こいつは誰なんだい?」
  「仲間よ、ソマー」
  地上に帰りたがっている、仲間。
  なおジョンソンさんはあの場でサヨナラ。あくまで修理工であって戦闘は苦手らしい。もちろんそれでも構わない。充分過ぎるほど活躍している。私の戦果は、彼のお蔭だからだ。
  「サリー、どんな感じ?」
  敢えて彼女に聞く理由?
  簡単だ。
  彼女こそがこの宇宙船を誰よりも知っているからだ。冷却ラボでの振る舞いを見る限り、宇宙船のデータをそこらの端末から引き出しているし。
  「この先だよ」
  「この先?」
  「うん。この先にブリッジがある。そこに親玉がいて、そいつを八つ裂きにしたら勝ちだよ」
  「八つ裂き」
  苦笑。
  戦前世代の子供っていうのはなかなかに物騒だ。
  まあいい。
  ここが連中にとって死守すべきラインであることは分かっていた、抵抗が激しいのも入った瞬間に分かってる。連中には文字通り後がないんだ、そして私らとは全く別の場所でパターソン
  大尉とやらが部隊を率いて戦っているのだろう。今までエイリアンたちが本腰を入れて私たちを討伐してこなかった理由、それは大尉の方を重要視していたから。
  もちろんそれで構わない。
  軽視されているのであれば、向こうが重要視されているのであれば、その隙に勝ってあげましょう。
  それがヒーローってものだ。
  「全員、武装は?」
  「完璧だぜ保安官」
  ポールソンが代表して答える。
  ターコリエンも頷いた。逞しくなったものだ。だけど、逞しくはなっているけど、部下2人のことは黙っていよう。Mr.サムソンは無事なのだろうか。
  「私が主軸となるわ、援護して」
  『了解っ!』

  ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!

  炎を噴射して上昇。
  敵は再度侵攻の為に少し離れた場所に集結中、この期に及んで出し惜しみはしないだろう。数にして、へぇ、300ってところか。
  何だかんだで連中は追い込まれているってわけだ。
  同情はしない。
  この結末は連中が招いたことだ。
  地球に手を出している理由は分からないままだけど、手を出したからこその報いってやつだ。
  私は空中に停滞、それから一気に速度を上げて飛ぶ。
  どこに?
  連中に対してっ!

  ジャキン。

  ガウスライフルを構える、撃つ。
  敵の一部が吹き飛ぶ。
  トリガーを引いた瞬間には着弾している、まさにチートだ。こんなの避けようがない。
  そして……。

  ジャキン。

  装填、撃つ。
  バリアを展開して私の攻撃に備えようとしたんだろうけど、意味がなかった。簡単に貫通して周囲の敵ごと吹き飛ばす。
  勝てるっ!
  勝てるぞーっ!
  この様子じゃあ10oピストルはいらなかったかな。まさかガウスライフルがここまでだとは思わなかった。
  「ミ、ミスティ、あれっ! あれっ!」
  「ん?」
  こちら優勢の勝負。
  ターコリエン君は何をビビッているんだ?
  指差す方向を見る。
  緑色の巨漢。
  エイリアンに改造された元人間たちとはまた異なるフォルム。もしかしたら彼も元人間なのかもしけないけど……何でこいつがここにいるっ!
  エンジンコアにいた化け物だっ!
  別の奴か?
  ……。
  ……別の奴のはずだ。あいつはミサイルで吹き飛んだ。
  生きているわけがない。
  ただ、分かること。
  厄介だということだ。
  「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
  雄叫び。
  そしてこちらに向かってダッシュしてくる。
  まるで戦車。
  エイリアンを弾き飛ばしながらこちらに向かって突っ込んでくる。
  「面妖な化け物め、拙者がお相手いたそう」
  「私がやるわ」
  「しかし……」
  「彼女に任せておいた方が得策よ。あたしらは、他の奴らをお相手するしましょう」
  「……御意」
  たしなめるマリアさん。
  彼女の言い分は正しい。マリアさん自身はあの化け物と初遭遇だから強さは知らないとはいえ、あんなデカブツ相手に生身は分が悪い。
  今の私はあの時とは違う。
  パワーアーマーがある。
  負けるものかっ!

  ジャキンっ!

  ガウスライフルを構える、発射っ!
  奴の後方にいたエイリアンたちが吹き飛んだ。
  えっ?
  あいつ、かわした?
  「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
  そう。
  あいつかわしやがった。
  横に回避しつつこちらに向かって爆走してくる。
  化け物か?
  いや、化け物には違いないんだけど、あれを回避するとは……化け物め……。
  次弾装填。
  その間に相手は肉薄してくる。
  くそ。
  飾り認定の10oピストルを連射。これは大した威力ではない、少なくとも化け物相手には玩具みたいなものだ。化け物もそれは分かっているのだろう、無視して突っ込んでくる。
  間合いが詰まる。
  瞬間、化け物は両腕を振るった。
  まずいっ!

  ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッっ!

  私は上昇、飛ぶ。
  指を触手のように振るったのだ。全て地面を叩きつけるにとどまるが、受けてみようとは思えない。パワーアーマーがあるとはいえね。
  その時、私達が侵入して来た方向から新手がやってくる。
  敵?
  いや、コンバットアーマーに銃火器、そして人間。
  ……。
  ……ああ、あれがパターソン大尉とやらか?
  彼が率いる部隊か?
  エイリアンたちは向こうを私たち以上の脅威として認識していた、それは間違ってない、向こうの方が多いし。私たちのグループに群がっていたエイリアンの大半は向こうに流れる。
  スルーってやつですか?
  甘く見やがって。
  まあ、完全にいなくなったわけではなく、ある程度は残ってる。それでも三分の二は向こうに行った。
  やり易くしてくれたものだ。

  ガクン。

  滞空して様子見していたら急に負荷がかかる。
  重い。
  何だ?
  下を見る、触手が足に……くそ、あの化け物がぶら下がってやがるっ!

  ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォっ!

  振り解くべくジグザグに飛ぶ。
  核融合バッテリーからパワーを貰っているジェットパックだ、こいつの分の重量があっても飛ぶのには充分だ。
  しかし、外れないっ!
  くそっ!
  振りほどけないっ!
  化け物は私の足に伸縮自在の指を伸ばした状態で絡み付き、ジグザクに飛行してもしがみ付いている。
  重いっ!
  さすがにあんなものと一緒に飛ぶのは重いっ!
  ただ一緒にランデブーするだけならまだ許せる。だがこいつ、指がどんどん上に、つまり足から上に上ってくる。最終的には私の首に絡み付いてどうにかしたいのだろう。そうじゃなくてもキモイ。
  させるかっ!
  身を捻ってガウスライフルを構える。

  ジャキンっ!

  食らえーっ!
  その一撃、絶対的っ!
  化け物の左半分は消し飛んだ。残るは右側だけだ。
  「やったっ!」
  「るおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
  雄叫び。
  直後に体が再生する。そして左指を伸ばし再び私に絡まる。
  そうか。
  こいつは再生能力があるのか。
  だからこそエンジンコアの戦いで復活したのだ、別のタイプではなく同一とみてもいいだろう。とはいえ何て再生能力だ、もはやデタラメなレベルだ。
  頭か。
  頭を潰せばあるいは……。

  「ミスティ、こっちに向かって飛んできてくれっ!」

  その時、ターコリエンが叫ぶ。
  手には何か持っている。
  グレネード?
  
  「ポールソン、合図をしたら撃ってくれっ!」
  「了解だ」

  何する気だ?
  だけど何か策があるのだろう。私は言われたとおりに軌道を変更、
  ショットガンを構えるポールソン。
  戦闘自体は、宇宙人との戦闘自体は現在有利に運んでいる。大半は乱入してきたパターソン大尉とやらの部隊に向かって行ったから、私らは楽になってる。だからこそポールソンは
  ターコリエンの指示に従えるってわけだ。とはいえ完全に宇宙人がスルーってわけではないから他の仲間は交戦中。
  私は飛ぶ。
  ターコリエンたちに向かって飛ぶ。当然化け物というオマケ付き。
  そして……。

  「ミスティ、上昇してくれっ!」

  了解っ!
  急上昇、だけどエイリアンは振りきれない、付いてくる。ただ無防備な姿をターコリエンたちに晒している。
  集中砲火にするつもりか?
  直後ターコリエンはグレネードを化け物に向かって投げつける。
  爆発……は起きなかった。
  何か白い煙が噴出、化け物の体を包む。
  へぇ。
  ターコリエン、なかなか良い肩してる。
  あの一瞬で確実にぶつけるなんてね。だけど意味が分からない、化け物はまだ私と一緒に上昇しているだけだ。ダメージはなさそうだ。どういうことだ?
  化け物が叫んだ。
  雄叫び?
  いや。
  苦悶の声だ。
  「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
  全身が凍って行く。
  私にしがみ付いていた指は飛行の振動に耐え切れずに砕け散る。あの化け物の体は急速に凍って行く。
  何だあれっ!
  ターコリエンの秘密兵器ってところか。
  ……。
  ……ああ、そういえば何か作ってたな。
  冷却ラボで取得してきた冷却ガスをグレネードに詰めた冷却グレネードってところか?
  破裂した瞬間に冷却ガスが飛び散る、みたいな。

  「今だポールソンっ!」
  「あんたを甘く見てた、見直したぜ、未来の軍人さんよっ!」

  ポールソンが氷の彫像と化した化け物にショットガンを叩き込む。
  砕け散るのを見る。
  それが。
  それが最後の光景だった。
  衝撃が私を襲う。

  ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンっ!

  あいたた。
  唐突に急降下して墜落しました。
  私無双終了。
  立ち上がってみる。ジェットパックが反応しなくなっている、ジェイソンさんが言っていたのはスペック上での話だから、もしかしたら稼働時間が過ぎたのか?
  まあ、パワーアーマーのお蔭で怪我はないけど。
  普通なら死んでる。

  ガクン。

  「う、うわ」
  そのまま後ろにひっくり返った。
  重いっ!
  体が重いっ!
  「何やってんだ、保安官?」
  「動けない」
  「ああ、パワーアシストが止まったのね。エネルギー切れか、壊れたのか。いずれにしても動力源なしで動くには正式な訓練が必要よ」
  「エンジェル、脱がすの手伝って」
  「これをBOSに譲ってくれるなら、ね」
  「借り物だから何とも言えない。でも助けてプリーズ」
  「あははは」
  「ターコリエン」
  「な、なんだい?」
  「ナイス」
  「ありがとう、一矢報いたかったんだよ、このデタラメな展開に対してね」
  化け物は沈黙した。
  粉々だ。
  もう復活しないだろ、たぶん。
  結局あれが何なのかは分からなかったけど厄介払いできたんだ、よしとしよう。
  エンジェルとソマーに手伝ってもらってパワーアーマーを脱ぐ。
  私は正式な訓練は受けていない。受けていない以上、これはただ重いだけの鉄の塊だ。
  「なあ」
  「どうしたの、Mr.クラブ」
  「こいつは壊れてるんじゃねぇか? そこに落ちてたんだけどよ」
  「みたいね」
  墜落した際にガウスライフルも一緒に落ちたわけだけど、どうも壊れてしまったようだ。煙が出ている。あれほどのデタラメ兵器だ、故障したことにより私ごと吹き飛びかねない。
  つまりは使えないってわけだ。
  恩恵が失われた。
  だけど、まあ、いいだろう。
  敵の大半は潰したし、先ほど新たに騎兵隊が現れた。たぶんあれがパターソン大尉とやらが率いる部隊なのだろう。
  合流して残党を叩き潰すっていうのもありだ。
  だけどその前に船を制圧しておく方がいい。完全に追い込んだ後の場合、制圧前にエイリアンどもが船ごと自爆しかねない。それは困る。私たちが去ったところで別に問題はないだろ、それだけ
  エイリアンたちは数を減らしている。大切なのはブリッジを制圧するまでこの戦闘を長引かせること。
  敵の主力はここにいる。
  これ以上はいないはずだ、温存する意味がない。そしていたとしてもあの面々が受け持ってくれる。
  ならばブリッジを制圧しよう。
  敵の頭を潰す。
  宇宙船の支配圏を握る。
  それが最善だ。
  私はそのことを告げる。
  「先にブリッジを制圧しましょう。自爆されてもかなわない」
  こいつらに自爆の文化があるかは知らないけど。
  だけど、その危惧はある。
  さあ。
  「問題は?」
  「いいんじゃねぇか、保安官?」


  戦いは最終局面へ。